ロクラク事件
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ロクラク機を使って録画したテレビ番組をインターネット経由で海外に転送するサービスが著作権侵害にあたるとして、NHKと民放5社などがサービスを提供する「日本デジタル家電」に対し差止めなどを求めた訴訟の上告審判決が最高裁であった。(最判平成23.1.20)
判決は、二審の知財高裁判決を覆し、一審判決と同じく著作権侵害を認め、再び審理を知財高裁に差し戻した。
判決内容は以下のとおりである。
放送番組等の複製物の取得することを可能にするサービスにおいて、サービスを提供する者(サービス提供者)が、その管理、支配下においてテレビ アンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(複製機器)に入力して、複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には、 録画の指示をサービスの利用者がするものであっても、サービス提供者は複製の主体である。
すなわち、「複製の主体の判断にあたっては、複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素を考慮して、誰が著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」ところ、
上記の場合、サービス提供者は、単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず、その管理、支配下において放送を受信して複製機 器に対して情報を入力するという複製の実現における枢要な行為をしていることから、サービス提供者を複製の主体と認定し著作権侵害を認めた。
さらに、裁判長の補足意見でこのようなことが言われている。
「カラオケ法理」は、物理的、自然的には行為の主体といえない者について規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって、行為に対する管 理、支配と利益の帰属という2つの要素を中心に総合的に判断するものとされているところ、同法理についてはその法的根拠が明らかでなく、要件が曖昧で適用 範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。
しかし、著作権法21条以下に規定された「複製」、「上演」、「展示」、「頒布」等の行為主体を判断するにあたっては、もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきではあるが、
「単に物理的、自然的に観察するだけでは足りるものではなく、社会的、経済的側面も含め総合的に観察すべきもの」であって、こんことは著作物の利用が社会的、経済的側面を持つ行為であることからすれば法的判断として当然のことである。
したがって、考慮されるべき要素も行為類型によって変わり得るものであり、行為に対する管理、支配と利益の帰属というニ要素を固定的なものと考えるべきではない。
控訴審判決でなされた判断は、こうした総合的視点を欠くものであって、著作権法の合理的解釈とはいえないとした。
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